「母は海に還り、まだ幼かった弟とは海で別れたわ」
―――幼い頃の悲しい記憶。
「私にとって海は大切な人達との別れの場所なの」
―――大切な人達との出会いの場所でもあるけれど。
「だから、というわけではないのだけれど」
―――決して、そんなことはないのだけれど。
フレアのしなやかな指がそっとトロイの手に触れ、 わずかに躊躇いをみせた後、優しく包み込んだ。
「貴方と別れるのも、なんとなく海のような気がするわ」
どういう意味かは聞かないで、私にも分からないから。